!ご注意!


 今回
縛り、強姦紛いの描写がございます。
 ・・・と申し上げましても、所詮管理人の書くものですので大したことはないと思います。
 しかし、ちょっとでもそういった描写が苦手な方や許せない方は、
このまま何も見なかったことにしてお引き返しくださりませ。
 「もう全然問題ございません!」「むしろそういうのが読みたい!」
という剛毅なお方のみご賞味ください。
 あ、ちゃんと
ハッピーエンドです!

 全て了解された方のみスクロールを。































 少し前から小十郎の態度が変わった。

 政務や何気ない打ち合わせの時間が短くなり、いつからか二人きりになることも少なくなった。最初は気づかないくらいのさりげなさで。
 次に夕餉の相伴を、あれこれ理由をつけては断るようになった。
 しかも毎回ではない。成実や綱元などが顔を揃えるときにはいる。二人きりだと断られるのか思えば、そういうわけでもない。
 そこでよくよく思い返すと、断られる時は明らかにその後のことを考えているときだと思い当たった。言葉になどしていないのに、どうして判るのか不思議だった。こういっては何だが法螺や嘘には自信が有る。少し前ならば彼の太閤、今は江戸の某狸親爺とも渡り合っているのだ。

 天下に通じると自負しているものを。

 それがどうした訳か、小十郎には効かない。

 それならば、と正攻法に出ることにした。
 某日。いつものように皆と政務に精を出しながらこれでもかというくらい、秋波を送った。それはもうあからさまに。
 すると書き物をしていた小十郎が横目でちらりとこちらを見るから、通じたと内心喜んだ・・・が。

 「殿、皆の前であのような態度は良くござりませぬ。最近では京の風俗に染まり、家中でも衆道を好む者も増えております。あれでは勘違いする者も出て参りましょう」

 などと、他の者が退出したあとにお小言だ。
 
 「他の者など知ったことではないわ!わしはそなたに送っておったに・・」

 そう腹を立てながらも二人きりになったのをいいことに、そのまま事に及ぼうと小十郎の顎に手を掛け唇を合わせた。
 久しぶりの感触はやはり好い。しかし舌を滑り込ませようとした瞬間───小十郎はその身を引くと素早く立ち上がった。

 「・・・では、これにて失礼仕ります」

 そう告げると、まるで何もなかったかのように部屋を出て行った。あとに残されたのは収まりのつかない体と心ばかりだ。





 十九で小十郎を抱いた。
 ずっと傍にいた男の体も心も、本当の意味で欲しかった。だからこの気持ちが“命”としてでなく受け入れられたときは、本当に嬉しかったのだ。
 
 ───小十郎が離れていく。

 体を繋がないことが、心も遠くする。
 これからもずっと続くと信じて疑うことがなかった。それなのに十年以上続いていた関係が、今になって変化を見せていた。
 こうなっては仕方がない。
 翌日、小十郎を部屋に召した───“命”として。

 主君として召せば、小十郎は断ることなどできない。
 そうしてやってきた小十郎に夕餉の相伴をさせて、酒も飲ませて。その間中、凝りもせず秋波を送り続けて。それでも何食わぬ顔をしたままの男に内心舌打ちをしながらも、ますます煽られた。



 「・・・夜も更けました。今宵は是にて失礼を・・・」

 小十郎はそう辞去を切り出したが、素直に許す訳がなかった。
 立ち上がろうとする小十郎の腕を乱暴に掴むと、衝立の向こうの続き間に引きずるように引き立てた。すでに敷かれた閨に投げ出されると、小十郎はようやく驚いたように見上げてきた。

 「殿、お待ちを・・!」

 制止する声にも構わず、胸倉を掴み乱暴に口付けながら、もう片方の空いた手で帯を解く。と、その手を抑えるように小十郎のごつごつとした手が重なった。

 「殿、どうかお聞きください・・・!」

 今まで散々避けてきた理由をいうつもりなのだろうか?一体どんな申し開きをするのか?───興味があった。

 「・・なんじゃ?」

 「・・小十郎ももう四十に手が届きまする。衰え、弛み始めた体をお見せするのはあまりに忍びなく・・どうか、お許しくだされ・・・」

 首筋に舌を這わせていた動きを止め、小十郎を仰ぎ見た。
 そこで初めて、申し訳なさげに困ったような小十郎の顔にぶつかった。

 ───そんなものか。そんな言い訳めいた・・・

 「何を、言っているのだ?」

 むっとしながら圧し掛かり、その胸元を乱暴に肌蹴た。
 現れたのはまだまだ張りのある厚い胸板。

 「この体のどこが衰えていると?どこが、弛んでいると言うのだ・・っ!?」

 そう吐き捨てると、その衰えたという胸元にきつく吸い付いた。唇に感じる跳ね返るような弾力に口の端が上がる───これのどこが弛んでいると?

 「政宗さま・・っ」

 小十郎は声を上げ、身を捩って逃れようとする。

 ───どうだ、その押し返してくる力だって、変わらず強いではないか。

 小十郎の言動の何もかもが納得できない。
 ぐわりと湧き上がるどす黒い感情が理性を覆ってしまう。
 小十郎の纏う着物をますます乱暴に剥ぎ取り、その肌に痕を刻んでいく。

 「・・痛・・っ!」

 脇腹近くに血が滲むほどきつく歯を立てると、小十郎もふいの痛みに小さく声をあげた。
 刀傷にさえ声もあげない男の口を開かせるのは己だけ。

 ───わしのものだ・・ずっと前から、この先もずっと──

 今まで感じたことのないような強い思いに囚われる。

 「・・政宗さまっ!どうか・・」

 それを感じ取ったのか、小十郎もいつになく強く抗った。そのことがますますこちらの熱を上げることにも気づかない。
 強く押し返そうとする腕も変わらず逞しい。しかしその逞しさが今は苛立ちを誘う。
 目に入った解けた腰紐を掴むと邪魔をする両手を背に回し、一絡げに縛り上げた。いつにない行いに驚き、信じられないような顔をした小十郎と目が合う。

 傅役を勤め、家中一と言われるほどの信厚い家臣を。
 『伊達家中に片倉あり』とまで言われる男を。


 無理やり犯そうとしている。


 その常軌を逸した行為に、思わず歪んだ笑みが零れた。










 「・・は、う、ぁ・・あっ、ああ・・・っ!」

 もう何度目かもわからない吐精に、小十郎の声は抑えもきかなくなっていた。

 腕の自由を奪い、体中に所有の痕を残し、飽くことも無く何度も精を吐かせる。

 『どうか、もう、お止めください・・』

 喘ぎながらも、頑なに乞い続ける小十郎の願いも聞いてやらない。
 己は達するのを抑えながら、執拗にゆっくりと責め立てた。
 酷い主よ、と自嘲しながらも舌は鎖骨を這い、指先は胸の尖りを捏ね、力を保ったままの陰茎は貫いたまま一瞬でも抜くことを惜しむ。

 「・・ぁ、は・・ま、さむ、ね、さま・・も、・・」

 小十郎は掠れた声で尚も言い募った。その声にさえ興奮して、腰の辺りにぶるりと震えが走る。

 「小十郎・・・」

 「・・っあ、あ、あ、・・・っ」

 耳元で囁いて、くちゅりとわざと大きな音を立て、形のいい耳を舌を嬲る。それとともに再開した律動で、自分の名と喘ぎ以外の言葉など許さない。

 もっともっと喘げばいい己だけを見て己だけを感じればいいわしのものだ離れていくなど許さぬ離れぬと約したに妻を娶った時も白石に城を与えた時もそれでも傍にいたではないかそれなのに何故今になって離れようとするのか離れられないと教えてやるこの体に───心に



 ・・・・・・・心に?










 「ま、さ・・むね・・・っさ、ま・・・」
 
 自分を呼ぶ声にはっと我に返る。懸命に見上げてくる小十郎の切れ長の目からは、涙が伝っていた。

 いつから泣いていたのかも判らない。
 快楽のせいなのか、悲しみのせいなのか区別もつかない。

 楽しい時はともに笑った。
 喜びも悲しみも分かち合った。
 沈んだ気持ちを察し、ただ静かに傍に居てくれたこともあった。

 いつだってお互いの考えていることが判った。
 確かにその心は繋がっていたはずなのに。



 それがどうしてこんなふうになってしまったのだろう。



 「・・政宗さま・・・」

 小十郎の伸ばされた手が頬に触れた。
 いつの間にか解けてしまった戒めの痕が、手首を紅く染めていた。その紅に、それまで猛るばかりだった心につきんと痛みが走った。
 小十郎の瞳にはもう確かな意思を感じる。そして固いが温かい指先が盛んに己の頬を拭っている。

 いつの間にか泣いていた。

 「・・・
こ、じゅろ・・・・・・小十郎、小十郎・・・・!」

 ただその胸に縋って名を呼ぶことしかできなかった。
 小十郎はそんな己を黙って抱き締めてくれた。そしてその変わらない温かさに己を恥じ、気づいた。

 小十郎はずっと傍に居たのだ。その心は離れてなどいなかった。
 しっかり者の傅役は、体など大したものではない、借り物なのだと教えてようとしたのかもしれない。
 今や天下に名高い知恵者は、もしかしたらこの先いつか必ず来る別れを思ったのかもしれない。
 この愚かな主君に、呆れながらも諦めず、ゆっくりと少しずつ伝えようとしていたのか・・・?

 「小十郎、許せ・・・」

 「・・・そうして、きちんと非をお認めになる貴方を、誇りに思うております」

 掠れてうまく出ない小十郎の声に、その心がまた繋がったのを感じた。







一応、30代まーくん×40代こじゅです。まーくんたらまだ全然若造だ(笑
「“最後の逢瀬”の拒否って責め立てられた40代こじゅを!」というリクにお応えして(笑


平成壱拾九年皐月、加筆修正。



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